「駅員」という仕事の特徴
私は現在、首都圏の鉄道会社で駅員として働いています。
他業界から転職してこの仕事に就いて丸2年が経つので、大体この仕事について分かってきたつもりです。
そこで、転職組の私が経験した駅員という仕事について紹介していきたいと思います。
以下に記載する内容は、あくまで私の職場での話になりますが、他社でも大枠は似たような状況かと思います。
これから鉄道会社に就職あるいは転職を考えている方、鉄道の仕事に興味がある方、そうでもない方にもご参考になれば幸いです。
1.サービス残業が少ない
一般的なサラリーマンの仕事では、大抵「何らかの成果物を生み出す」ことや「目標の達成」といった条件を満たすことではじめて終了すると思います。
そのため、期限内に成果が上げられなかったり、ノルマや目標が達成できないとなれば、場合によってはサービス残業をしてでもなんとかしなければならないこともありますね。
一方、駅員はシフト制の職場です。
例えば、ある日の朝9時から勤務を開始して翌日朝9時まで勤務したら、次の出番者が出てきて交代しその後はフリー、という24時間勤務が一般的です。
(普通のサラリーマンと同じような日勤のパターンもあります)
つまり、基本的に必ず交代者がやってくるので、終了条件が「時間の経過」となります。
極端にいえば、「職場にいて時間が経てば終わる」仕事なので、必然的に残業が発生しにくい仕組みになっているのです。
勿論、残業が全くないというわけでもなく、輸送障害が発生したりイベント時で利用客が多く人手が必要なときは、上司から残業をお願いされることもあります。
ただ、その場合でも残業代は1分単位でつくので、労働分の対価はきちんと支払われることになります。
私は駅員の仕事を始めてから今まで、サービス残業をしたことはなく、必ず残業代を頂いています。
2.仕事内容が明確に決まっている
前述のとおり駅員はシフト制ですが、どの時間にどういう仕事をするのかということも「作業ダイヤ」というタイムテーブルで決められています。
例えば以下のような感じです。
・9:00~11:00 改札業務(精算や案内等)
・11:00~12:00 構内巡回
・12:00~13:00 休憩
・13:00~15:00 出札業務(定期券や企画券販売等)
・15:00~16:00 休憩
・16:00~17:00 ホーム立哨
いずれの仕事も連続性がなく単発でその場で完結するものばかりで、次の勤務に仕事を持ち越すことは基本的にありません。
ゲームに例えると延々とテトリスをやってるようなイメージでしょうか。
私の前職は事務職でしたが、担当範囲も責任の所在も曖昧なのに納期だけは決まっている仕事が多く、どこまでやれば自分のタスクが終わったのか分かり難い場面がよくありました。
また、多くの仕事が数週間、数ヶ月といったスパンで区切られていたため、進捗管理やスケジューリング、事前根回しの段取り等も必要で、常に仕事のことが頭の片隅から離れず、休日も悶々としながら過ごすことが多々ありました。
一方で現在は、自分が何をしなければいけないかが明確なので、こちらのほうが仕事に集中しやすいと感じていますし、オン・オフの切り替えが容易です。
ただ、自分の裁量で仕事内容を設定できる自由度はほぼ皆無なので、人によっては窮屈で退屈に感じるかもしれません。
3.あらゆるお客様に対応する必要がある
鉄道は様々な層の方が数多く利用するため、駅の窓口にも老若男女・国籍を問わず非常にバラエティー豊かなお客様がやってきます。
ほんの一部だけ例をあげると、
・日本語も英語も話せない旅行者の方
・完全に出来上がった酔っぱらいの方
・「私はこれからどうしたらいいでしょうか」と尋ねてくる方
・「◯◯線(他社)は高すぎる。なんとかしろ!」と仰る方
・ロッカー前で着替えを始める方
・駅構内で大の字で寝だす方
・「金を貸してくれ!」と駆け込んでくる方
・セーラー服に網タイツの高齢男性
・いきなり「天皇陛下バンザーイ!」と叫びだす方
……といった感じです。
毎日それはそれは色々なお客様がやってきては、色々なことをなさるので、仕事自体はルーチンワークなのですが飽きが来ません。笑
ところで、鉄道という事業は民法上の「契約自由の原則」の適用を受けません。
鉄道会社側がお客様を選ぶ、ということが許されていないのです。
なので、基本的にどのようなお客様でも乗車拒否をすることはできないし、窓口に来れば対応しなくてはなりません。追っ払ったり、逃げたりしてはいけないのです。
(他にも郵便・電気・水道・ガスといったインフラ系事業も同様です)
この点は、数ある接客業の中でも少々特殊なところであり、大変なところでもあります。
4.勤務の忙しさが運に左右される
駅の仕事は基本的にルーチンワークの連続なので、頭をフル回転させて悩んだりするような場面がなく、慣れてしまえばある意味惰性で回していけます。
何もない日は非常にまったりとした、平和な時間を過ごすことができるのですが、そんなときばかりではありません。
周辺で大きなイベントがあるときには、利用客が普段の3倍、5倍以上も膨れ上がり、構内やホームが人で溢れかえります。
必然、精算や遺失物の問い合わせ、道案内や呼び出しが倍増し、さらには線路内に物を落とした、エスカレーターが過積載で止まった、人混みで体調を崩した人が発生した等々のトラブルが矢継ぎ早に起こります。
また、人身事故や車両トラブル等の輸送障害が発生した場合はさらに悲惨で、トラブルの復旧処置、振替輸送の情報取得とお客様への案内、乗車券の払い戻し、問い合わせ対応といったことを、けたたましく指令放送が流れお客様の怒号が飛び交う中で、迅速にしなければなりません。
首都圏のそれなりの規模の駅でこのような状況になると、まさに地獄絵図です。
そして悲しいことに、このような事態が発生するかどうかは、我々ではほとんどコントロールできず、運による要素が強い、という特徴があります。
イベントに関しては、あらかじめ開催スケジュールが分かっていることもあるので、ある程度の予測は立てられるのですが、輸送障害についてはほぼ不可能です。
これから飛び込みや線路内転落、痴漢や車両故障などのトラブルが起きるかどうかなんて誰にも分かりません。
たとえ自社の路線で何も起きなくても、直通や乗り継ぎ先、近隣を走行している他社の路線で障害が発生すれば連鎖的に影響を受けます。
トラブルに当たってしまったら「運が悪かったね」という世界なのです。
もちろん、そうしたトラブルが起こりにくいようにしたり、起こったとしてもすぐにリカバリーできるような対策を講じておくことで負担を軽減することはできるのですが、根本的な解決には至りません。
駅員は、こうした「運の悪い」事態が起こっても迅速かつ適切に対処できるように、普段からある程度の緊張感を保っている必要があるのです。
以上、簡単に駅員の仕事の特徴を紹介させていただきました。
私はまったく他業種のいわゆる激務高給の民間組織から、時間的自由を求めてこの世界に入りましたが、残業もほとんどなく休みも取りやすいので、結果的には概ね満足しています。
まぁ、給料は3分の2以下になりましたけどね。。笑